ステップカット
ステップカットは、ガードルに平行な面が、ステップ(段)状につけられたカットの総称です。平行な面が造る単純ともいえる反射のパターンがこのカットの特徴で、動的なブリリアントに対して静的な輝きといえます。ブリリアントカットとともに、ファセットカットを代表するものです。エメラルドカットは角を落とした正方形または長方形のステップカットです。ステップカットには、そのほかにスクエア(正方形)、バゲット(小さな長方形)テーパーバゲット(台形)など、さまざまな形があり脇石としてよく使用されます。カラーストーンでは、クラウン部分がステップカットで、パビリオン部分がブリリアントカットというものもあります。これらを、ミックスカットといいます。
ブリリアントカット
ブリリアントカットは中心からファセットがガードルに向けて放射しているものです。ダイヤモンドのラウンドシェイプ・ブリリアントカットは、その基本的なもので、通常省略されてラウンド(丸)や、ブリリアントカットと呼ばれています。マーキスシェイプ・ブリリアントカットやペアーシェイプ・ブリリアントカットも、カット(面のとり方)やシェイプ(形)が省略され、単にマーキスとかペアーシェイプと呼ばれます。ブリリアントカットは名が示すように、強い輝きを発揮する面のとり方で、品格の高い落ち着いたステップカットとは、また別の美しさを発揮するものです。
プリンセスカット
プリンセスカットはスクエアの形とブリリアントの輝きを融合させた成功例です。プリンセスカットは今まで開発されたスクエア・カットの中で最も人気があります。
品質の見分け方
澄んだ氷のような高い透明度、内部から発しているような輝きと、姿・形のバランスが、エメラルドカットの品質を見分けるポイントです。これは肉眼で比較して、把握する以外にありません。そしてこの美しさは結晶の善し悪しで99%決まってしまいます。質の良い結晶は、腕の良いカッターの手にかかります。一般にステップカットは外に発するブリリアンシィが少なく、内部のインクルージョンなどが見やすくなります。時に1カラット以上のクラリティがSI2(10倍の拡大で楽に発見できるキズのあるもの)の場合、キズが肉眼で見え、美しさを損なうケースがあります。そのため、現物をよく確かめることが必要です。宝石を判定する重要な要素は「姿の善し悪し」です。簡単な表現ですがその要素は複雑です。落とした角のバランスや、宝石の厚みが深すぎないか、面の大きさが適切で存在感があるかどうかなど様々です。しかし具体的な要素を丁寧に判定していくとカットの質が見えてきて姿の善し悪しが判定できます。淡い色の原石はエメラルドカットされた場合、色が中途半端になります。ライト・イエローの原石は色を濃く見せるプリンセスカットにされることが多く、より魅力的な宝石に仕上げられます。
選び方
エメラルドカットのダイヤモンドらしさを楽しみたい方には、1.5カラット以上のジェムクオリティをおすすめします。透明度が高く、形の良いエメラルドカットは、同じダイヤモンドでありながら、ラウンドブリリアントカットとはまったく別の宝石に見えます。その高い品格は、自然の持ち味をそのまま生かしているからでしょうか。エメラルドカットを選ぶときは、ジェムクオリティで色がGカラー以上、キズが肉眼で見えないことを目安にしてください。縦横の比率は、デザインとの調和と好み次第です。現状ではラウンドブリリアントカットと比較すると、かなり割安です。1カラットサイズのジュエリークオリティは石のみの価格で1個あたり5,500USドルが目安です。(2012年現在)
ここまで
– 諏訪恭一 決定版 宝石 世界文化社 2013年より引用-

戦前から続く宝石商に生まれ、ダイヤモンドをはじめ各色石について、宝石の美しさとそれぞれの価値の差について、著書「宝石」シリーズを始めとする多数の著書にて教示解説し、啓蒙活動をしてこられた諏訪恭一氏ですが、宝石業界に携わっている方なら知らない人はいないでしょう。また諏訪氏は今年の2月~6月まで上野の国立科学博物館で開催された「特別展 宝石 地球がうみだすキセキ」を監修し、モリスからも6ctのミャンマー産天然無処理ルビーを展示協力致しました。これも諏訪氏のご推薦なくしては成しえなかったことです。
特別講演開催決定
2022年8月21日(日) (13:00~15:00国際文化会館)
この度、モリスでは諏訪氏を迎え、
「時間と場所を越えて受け継がれる宝石」をテーマに、
宝石品質判定を考案されたいきさつ、
そして実際にどのように使うのか?
実践を交えてご講演頂きます。