美しく輝くダイヤモンドの中でもメレーは、他の宝石の脇役をしたり、いくつもが集まって美しいジュエリーになるのです。
メレーダイヤモンドとは小粒のダイヤモンドのことを指します。日本では0.2ctカラット未満のものをいい通常のダイヤモンドとは区別して扱われています。メレー・ダイヤモンドは、数個まとめてデザインされるジュエリーに使われたり、他のカラーストーンを引き立たせる脇役であったりします。ちなみに本書に掲載されている、ほとんどすべてのジュエリーにメレーダイヤモンドが使われていることからも、宝石を語る時に忘れてはならない物です。第2次世界大戦以降、メレー・ダイヤモンドはベルギーのアントウェルペンやドイツのイーダーオーバーシュタインなどで研磨されていました。しかし戦後の復興と共に工賃が上がり、まずドイツのイーダーオーバーシュタインがメレー・ダイヤモンドの研磨地としての地位を失いました。一方、1960年代にインドの研磨技術が急速に力をつけてきました。工賃の安さ、優れたマネジメント、ジュエリーに対する伝統的な理解などの要因からその後も発展が続き、ピーク時には研磨工が100万人を超えるほどになり、現在(1993年)でもメレー・ダイヤモンドの研磨工と生産個数は、インドが世界の90%以上占めています。ところで、世界のダイヤモンド原石の役70%(1992年当時)を流通させているダイヤモンドシンジケートである、ロンドンのデ・ビアス社がインドに供給しているのは、形が不揃いで小粒なため研磨に時間がかかる原石です。形の良い粒ぞろいの原石は、タイのバンコクの研磨業者に供給しています。現在バンコクには約5000人の研磨工がいて、良質のジュエリー用の58面のフルカット、高級時計用のシングルカットのメレー・ダイヤモンドはバンコクで研磨されているものが多く、バンコクの研磨の質が高いことがうかがえます。現在、メレーを数個使ったジュエリーのかなり良質なもので20万~30万円で買うことができるのは、インドやタイの工賃の安さの恩恵を受けているからです。
ここまで- 諏訪恭一 決定版 宝石 2013年より引用-

戦前から続く宝石商に生まれ、ダイヤモンドをはじめ各色石について、宝石の美しさとそれぞれの価値の差について、著書「宝石」シリーズを始めとする多数の著書にて教示解説し、啓蒙活動をしてこられた諏訪恭一氏ですが、宝石業界に携わっている方なら知らない人はいないでしょう。また諏訪氏は今年の2月~6月まで上野の国立科学博物館で開催された「特別展 宝石 地球がうみだすキセキ」を監修し、モリスからも6ctのミャンマー産天然無処理ルビーを展示協力致しました。これも諏訪氏のご推薦なくしては成しえなかったことです。
特別講演開催決定
2022年8月21日(日) (13:00~15:00国際文化会館)
この度、モリスでは諏訪氏を迎え、
「時間と場所を越えて受け継がれる宝石」をテーマに、
宝石品質判定を考案されたいきさつ、
そして実際にどのように使うのか?
実践を交えてご講演頂きます。