静電気を発生させる「電気石」の宝石
・鉱物名(和名) elbaite(リチア電気石) | ・主要化学成分 ホウ酸ケイ酸ナトリウムアルミニウム | ・化学式 Na(Al.Li.Mg,Fe,Mn)₃Al₆(BO₃)₃Si₆O₁₈(OH,F)₄ | ・光沢 ガラス光沢 |
・晶系 三方晶系 | ・比重 2.9-3.1 | ・屈折率 1.61-1.67 | ・へき開 不明瞭 |
・硬度 7 | ・分散 0.017 | ◇産地 ミャンマー | ◇サイズ 2.47ct 8.1/7.4/5.7 (mm) |
多彩な色と多彩な呼び名を持つ
トルマリンは、共通の結晶構造を持つアルミニウムとナトリウム(カルシウム)にさまざまな化学成分が加わったホウ酸塩ケイ酸塩鉱物の一族。リチウムが主成分のリチア電気石(エルバイト)、マグネシウムが主成分の苦土電気石(ドラバイト)、鉄が主成分の鉄電気石(ショール)など、成分によって分類される。しかし宝石には、近代鉱物学が発展するよりも前から主に色の特徴に基づいて分類された名前が使われている。このため、宝石名と鉱物種名は完全に一致するわけではない。
加熱や放射線照射によって色を改善できる場合もあるが、永続的な改善は保証されない。
リチア電気石は微量成分に応じて鮮やかな色彩を示すことが多い。それに対し、鉄電気石は黒くて不透明であり、苦土電気石の多くは茶色を帯びている。宝石になるものは殆どがリチア電気石である。ナトリウムをカルシウムで置き換えたリディコート電気石も宝石になることがある。発色因と微量成分の関連は単純ではないが、大まかには、ピンクはマンガン、緑は鉄やクロムまたはバナジウムによるもの。加熱や放射線照射によって色を改善できる場合もあるが、永続的な改善は保証されない。多色性があり、カット行程を決める重要な要素となる。まれにカラーチェンジがあり、太陽光では黄褐色を帯びた緑色、白熱灯ではオレンジがかった赤色に見える。ペグマタイト中や、花崗岩マグマによる接触変性作用を受けた結晶質石灰岩中に柱状結晶として産する。耐久性に優れ風化に耐え、砂礫として集積して漂砂鉱床を成すことも多い。シンハラ語で「宝石の砂礫」を意味するトゥラマリが名の由来となった所以である。和名、電気石は、圧電制と礁電性の特性により、発生した静電気が柱状結晶の端にほこりを吸い付けることから。
ルベライトはマンガンによるピンクの発色。
ルベライト・ピンクトルマリンは、微量成分のマンガンが発色因。1世紀の古代ローマのプリニイの時代、「カーバンクル」は赤い石を指したが、ルビー、スピネル、ガーネットに加え赤いトルマリンも含まれていたと考えられる。中国では赤とピンクのトルマリンが好まれ、彫刻して調度品として使われた。◇出典(参考文献)起源がわかる宝石大全(ナツメ社)