高い透明度と、重さから考えると「顔」が大きく、存在感のあるルビーです。宝石品質判定のクオリティスケール上では、美しさ「A」輝きがあり美しいもの、色の濃淡は「#3.5」のジュエリークオリティです。ミャンマー最北部カチン州のルビー鉱山Nam-Ya(ナヤン)から産出されました。結晶でしたが、そのままファセット(切子)面をつけ、オーバルミックスドカットに磨きました。結晶の透明度が高く、美しいミャンマー産の特徴である少し青味感じさせる色調ながら、何となくピンキッシュに見えてしまうのは、テーブル面を上にした縦横のサイズとの比率から、厚みがすこし不足して光の一部が結晶の下に抜けてしまうことが原因です。テーブル面を上からみた時、真ん中に色の淡く、キラキラとした反射が見られない部分をウィンドウ(窓が開いている)と言いますが、テーブルを水平方向にして、宝石ルビーの結晶を見た場合、キューレット(宝石下部の尖った部分)の内側の角度が125度以上広がるとウィンドウができ始めます。このルビーは、ウィンドウが残ることを覚悟の上で、テーブル面をなるべく大きく残すことを優先しました。(いつも「今日のルビー」では、何度か伝えていることですが…)大自然の造形美であるルビーの原石を生地をなるべく大きく残すこと、自然に近い姿を大切にすることを最優先にするのが、モリスシンギュラリティカットの考え方のベースです。もちろん、このルビーもその考え方で磨きましたので、この形になりました。その美しさを縦横のサイズ、輪郭を20%~25%削り落として厚みとバランスのよいサイズにリカット(再研磨)すると、ピンキッシュなウィンドウが解消され、赤みが強くなるでしょう。しかし、いまその作業をして小さくしてしまう必要はないと思います。この「顔」の大きさを楽しんでいただき、リカットは「いつか」で良いと思います。ジュエリーに着けて楽しんでいただくとき、ひとサイズ大きなルビーの存在感を楽しんでいただけると思います。